プログラムを作って理解する統計力学-固有エネルギーから熱力学量を算出②-

はじめに

前回は固有エネルギーから確率分布を算出してみました。今後は得られた確率分布から熱力学量を算出してみましょう。特にこちらで紹介したようなエネルギーやエントロピー、自由エネルギーといった物質とも関係が深い量をみていきます。今回の記事でマクロな物理量とミクロな物理量がつながっていきます。

内部エネルギーの算出

前回は特定の温度での得意の固有エネルギーが出現する確率を求めました。しかし、全体で見た時どのくらいのエネルギーが出現するかは現状では分かりません。そこで特定の温度での平均のエネルギーを求めます。

平均と聞くと全部足して、足した個数で割るという計算を思い出しますが、前回のグラフでも見たようにnが小さいときには確率が大きく、nが大きいときには小さくなるという分布をしていました。これを先ほどの平均処理を行うと、せっかく特徴的な分布であったのにすべて平等に扱ってしまいもったいないです。

そこで、確率に重みをもたせ、すべてを足すという計算にします。すると特徴的な分布を持たせたまま全体のエネルギーを求めることができます。

ここで重みをもたせるといいましたが、いろんなところで聞きましたが、私はこれを初めて聞いたとき全く分かりませんでした。簡単に言うと掛け算です。注意したいのはただの掛け算ではなく、割合に応じた掛け算になります。

例えば、シャンプーのボトルとそのシャンプーの詰め替え用という二つのものを買うときボトルは基本的に1つ買えば十分ですし、詰め替え用は複数買うと思います。ボトルは1という重みで詰め替え用は2とか3とかの重みを与えます。それを掛け算で表します。

これを固有エネルギーという種類に確率という個数を掛け算します。前回の固有エネルギーと確率の記号を使って、その掛け算の結果をUnとすると

$$ U_n = E_n \times p_n $$

となります。これをすべてのnで足し算すると特定の温度での平均のエネルギーUが計算できます。

$$ U = \( \displaystyle \sum_{n=0}^{100}U_n \) $$

このUという物理量は熱力学の世界では内部エネルギーと言われています。内部エネルギーとは特定の温度での原子や分子の運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの平均的なエネルギーです。

今回の場合、調和振動子というばねにつながれた原子や分子の系なので、そのばね振動の運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの平均のエネルギーになります。

前回の感情の話で例えるとUというのはすべての感情を平均化して、その中でも最も喜怒哀楽が大きいものを表す量になります。楽という量が他の感情よりも大きいければ、その楽という感情の重さ(掛け算)が大きく、表に出てくる感情が楽でその量がUになります。

このUはエンタルピーHとも関係が深く、この記事に書かれているHとほど同等と考えてください。

最後に

今回は前回の確率分布から内部エネルギーという量を算出してみました。ここで重要な考えとして、分布に重みをもたせて足し算すると平均化されたエネルギーが算出されるということです。この考えはここだけでなく、波の重ね合わせやAIなどでも使われている考えなので直観的でもいいので理解しておくと便利でしょう。

参考文献

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